永井 良和
風俗営業取締り
1960年生まれの都市社会学者(現代風俗研究会会員)が、風俗営業取締り法の改正の経緯を追うことにより、戦後日本社会の変貌を描き出した、2002年刊行の本。戦前の風俗規制(成人男性対象、飲む・打つ・買う)は地域差を前提として統一的・包括的な法を持たず、治安・衛生・国恥意識のために特定場所に「悪」を「隔離」し(素人と玄人の線引き)、一般人からは不可視化した(警察からは可視的)。敗戦直後の法の空白期間を経て、1948年には風俗営業取締り法が成立したが、その際民主化を反映して規制対象の縮小が見られたものの、警察と業者の癒着もあり、「買う」点に関する規制は緩く、戦前の統制は基本的に踏襲された。その後経済復興と共に、深夜営業や女性・子ども向けの娯楽産業が発展し、取り締まり対象が拡大すると、それに伴い警察の権限が徐々に拡大してゆく。1970年代にはモータリゼーションの中でモーテルのような「個室」の拡散現象が見られ、1980年代にはニューメディアの利用(アダルトビデオ、カラオケボックス等)やコンビニの普及、用途地域制度の無力化により、従来の空間的規制に依拠した取締りの枠組みが無力化する中、主として性産業を中心に取締りの強化が見られた。1990年代のテレクラ問題とCD・携帯電話・インターネットの普及の中、従来の玄人・素人の区分は失効して年齢(子どもの聖域視)が規制の中心的な基準となり、かつ無店舗型営業やブローカー等も規制対象となった。他方で、夜の営業や「スポーツ」については規制が緩和されている。このような風俗統制史から分かることは、第一に対症療法的な「治療」から「予防衛生」への方向性であり、それに伴うパターナリズムの拡張である。第二に、消費社会が人間関係を商品化していく軌跡である。第三に、規制と逸脱のいたちごっこであり、監視・統制にそれほどの効果を期待できないという事実である。論理が明瞭で分かりやすく、お薦め。
本書のタイトルを見ただけでは、内容の硬さを想像出来ないかもしれない。 |
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このページの情報は 2006年7月15日17時36分 時点のものです。 |



