井上 章一
愛の空間
戦前、恋人達が愛し合う場所は蕎麦屋の2階だった。ラブホテルが回転ベッドなど装飾過多なのは、プロが春をひさぐ場所として連込み宿が利用されたことの名残である。思わず数年前(でしたっけ?)の番組のようにみんなが「へぇ?」とうなずくこと請け合いのミニ知識満載の本です。
性行為専用の空間を持ち独特の趣向をこらすのは、日本独特の現象であるという発想に基づく、外から内へ移り行く日本人の性愛空間の変遷を辿る性愛空間の建築史書。主に明治以降の性愛空間変遷の歴史を関係者への取材や近代日本の自伝や小説に基づいて調査している。明治期には専ら屋外が利用されており、屋内空間が利用されだしたのは戦後のこと。戦後しばらくしても、屋内空間は玄人の空間であり、素人は専ら屋外利用が多かった。屋外から待合、ソバ屋、円宿、ラブホテルなど屋内施設への変遷をリアルに記述。ちなみに、ラブホテルとシティホテルの違いは、1985年施行の新風営法により法律で定められており、食堂やロビーの床面積、フロントやインテリアに関する規定がある。
原武史氏が『皇居前広場』(光文社新書)で本書を推薦していたので読んだが期待を裏切らない内容にうれしくなった。原氏は本書をきっかけに前著を書いたそうだ。
この本の対象とするところは、エロ文化、特に男女が愛し合う場所(と記述すると余計に恥ずかしいが)についての言説の歴史である。そこから、照らし出される、アウトドアが普通だった、や、蕎麦屋の二階の話、などはとても興味深かった。性愛、というとどうしても時代を超えるものを連想してしまう。それは一面では正しくて、スケベ文化はずっと私たちの生活の基底にあることがこの本を読めばわかる。しかし、その形式はすごく歴史的であって、今の私たちから見ると驚くようなことも書いてある。 |
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このページの情報は 2006年7月15日17時36分 時点のものです。 |




