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長谷部 恭男

憲法と平和を問いなおす

憲法と平和を問いなおす

人気ランキング : 27023位
定価 : ¥ 714
販売元 : 筑摩書房
発売日 : 2004-04-07

価格:¥ 714
納期:通常24時間以内に発送
オススメ度

立憲主義を元に日本国憲法について考察していくのが本書である。ただ著者
の「立憲主義」の使い方と巷の凡百の憲法学者との使い方には相違が相当
程度あるので注意が必要だ。自然権というものについて決して自然な考え方
ではないと述べた上で、「人が人であること自体によって、自由で平等だと
考えることが、人のありのままの自然の傾向であるかも、おおいに疑わしい」と述べる。
穏健な平和主義への選択肢として5つを挙げ、1つ1つを考察していく部分
を見れば著者の論理的能力にうならされるであろう。

オススメ度

憲法と平和を論じる上で理性的な議論の視座を提供する良書。
 なぜ多数決か、なぜ民主主義かから話が始まる。そして、立憲主義が民主主義とは緊張関係にあることを明らかにする。
 「民主主義にもとづいて行使される国家権力でさえ制限されるという点に、立憲主義の強みとその謎がある」(13頁)
 立憲主義を、比較不能な価値を奉ずる各人が、それでも社会として統一した決定を導出するための、公私をわける極めて人為的な装置、と位置づけ、我が国の平和憲法との関係を探る。

 憲法典は、準則ではなく原理であるという考えから、必ずしも文言に厳格である必要はない。事実、表現の自由や政教分離規定は言葉通り厳格に解されていないし、それで妥当である。だから、9条は現実に即していないと批判する人々は、9条のみは厳格な文理解釈をするべきという何らかの特殊な前提をおいている。一方、絶対平和主義はそもそも立憲主義と整合しない。なぜならば、警察力と人民による抵抗で国の脅威に立ち向かうことは、公私の境界をなくした戦争=地獄理論と親和するからである。結論として、穏和な平和主義を提唱する。長谷部教授の著作の入門的な本でもあり、憲法改正議論が盛んな今こそ、「理性的な議論のために」もおすすめできるだろう。なお、法学教室2005年10月号30頁とあわせて読むと面白いと思う。

オススメ度

優れた書物だ。立憲主義というものがどのようなコンセプトであるか、その根本を知ることが出来る。平和主義の部分については、最上敏樹著「人道的介入−正義の武力行使はあるか」と併せて読むとより深い理解が得られると思う。なかなか冷静に議論を展開しておられ、一家に一冊常備していただきたいほどだ。日本の安全保障は、現状を維持しつつ、多角的外交を展開することによって十分守れると、私自身考えているから、その意味著者の理論には共感できるところが多い。絶対平和主義が感情論であるのと同時に、無定見な外国追従もまた感情論であり、国論を分かつ価値の問題を公共空間に呼び込むのも立憲主義に反する感情論となり、却って国家の安定を損なう。では、何故3点かというと、国家は本来宗教共同体であって、調整問題としての世俗的部分と信念体系としての宗教的部分がかならずしも明確に分かれておらず、一見調整問題と見える事柄が、実はその背後に宗教的問題を抱えているという錯綜した状況にあり、その部分を十分捉えた議論になっていないところである。例えば、かつて地鎮祭を世俗的風習と解した判決があったし、国歌斉唱時に於けるピアノ伴奏を学校の通常業務と解する判決もあった。風習として定着している行事は宗教行為とみなさないとする先の自民党改憲案に鑑み、この点はより深い考察が必要だ。

オススメ度

『オデュッセイア』を評して「それにしても、率いた兵士をことごとく失ったうえ、故郷で待ちつづけた妻への求婚者たちを皆殺しにする男のどこが英雄なのか理解に苦しむ。やはり異なる世界観は比較不能である」(p.199)と長谷部は言う。
オスとしてのとさかの本能が激烈なだけじゃないか。何がなんでも生き残り、オスの本能を全うしようとする男を英雄視する文化がなぜ理解に苦しむほどのものなのか。情熱の火柱が太いんでしょう、古代人は。
洗練された文化にも野蛮な古層に属する価値観が生き延びる例として、忠臣蔵に見いだせる「かぶき者」的気質を山本博文があげている(『江戸時代を探検する』新潮文庫)。
官僚養成大学官僚養成学部のトップを嘱望される人物は、歴史に関する想像力の貧困のため個人的に理解不能な価値観に「比較不能な価値の迷路」と普遍的ラベルを貼って売りに出しているのかいな、と心配になってくる。

オススメ度

民主主義の意義と限界について述べた第1部と、立憲主義の役割について述べた第2部は秀逸で、これだけでも本書を読む価値があると思います。
平和主義について述べた第3部でも興味深い議論が展開されます。ただし、「憲法第9条、とりわけ集団的自衛権の否定を、国家による合理的自己拘束としてとらえる」という著者の結論には疑問があります。集団的自衛権の否定が最高裁判所の判例として確立しているならばこういう議論も成り立つかもしれませんが、実際には内閣法制局の「意見」にすぎず、内閣には内閣法制局の「意見」に従う法的義務はありません。つまり、集団的自衛権の否定は法的には自己「拘束」になっていないのです。
ともあれ、本書が良書であることには間違いありません。特に抽象的思考が好きな人には、十分な知的刺激を与えてくれることでしょう。

 
 
 
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2006年7月15日17時36分
時点のものです。

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